病院の選び方

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病気になったら誰もが必ず思うことの筆頭に『いい病院にかかりたい』という思いがあります。
しかし『いい病院』を探すことは簡単ではありません。

その理由は、私にとって良い病院が、あなたにとっても良い病院かどうかは分からないからです。
また、私にとっても、この前は最高に良い病院だったけれど、今回は良くない病院だと思った、ということもよくあります。誰にでも普遍的に、確実に『良い病院』というのは存在しません。だからこそ、『いい病院探し』はいつでも最も難しい問題となるのです。

私たち医療コーディネーターは【私にとって良い病院とは?】を次の3点で考えています。

1.専門性
2.利便性
3. 相性

引き続き、それぞれを説明します。


1.専門性

体に不調を感じた時、自分はどこの病院にかかったら良いのか、といったことと同時に、何という科にかかったら良いのかも分からずに悩む場合もあるでしょう。例えば、乳房にしこりを感じたら何科へかかりますか?女性特有の臓器ですから、婦人科でしょうか?女性科でしょうか?それとも内科でしょうか?それとも外科?そもそも近くのクリニックで良いのでしょうか?大学病院でしょうか?しこりだから、すぐにがんセンターへ駆け込む必要があるのでしょうか?どの病院がどんな機能をもっているのか、病気にかかったことのない人であれば分からないことだと思います。

そして病名が分かった後も、どこに自分の病気の専門医がいるのかということは分かりません。そもそも専門医にかからなければいけないのかどうかすら分からないでしょう。がんならがんセンターにかかることが最善なのでしょうか。糖尿病なら糖尿病の専門医でなければいけないのでしょうか。答えはNOです。同じがんでも、その人の病状や何の治療を受けたいのかによって、専門性の高い医師に診てもらう必要がある時もあれば、そうではない時もあります。例えば、胃がんの初期で内視鏡の手術を受けるのであれば、内視鏡で胃がんの切除をした経験のない医師にかかるよりも、専門医がおり手術件数の多い病院にかかることを検討するべきでしょう。しかし、内視鏡の手術後に再発をして抗がん剤治療をする場合に専門医である必要があるでしょうか?抗がん剤の専門医と言えば、腫瘍内科医です。しかし現在の日本で腫瘍内科医は全国に205名(2008年4月時点)しかおりません。この資格はわずか2年前に出来たばかりの資格です。しかしこれまでも全国で実質的に抗がん剤治療を行ってきた医師はたくさんおります。つまり腫瘍内科医という最新の肩書きをもっていない医師でも十分実力と経験を兼ね備えている医師は存在するということです。

当たり前の治療、経験出来る数の多い治療法であれば肩書がなくても良い場合も多いのです。自分の場合は専門医に診てもらいたいという希望があるのか、それはなぜなのか、専門医でなくても経験がある医師であれば良いのかなど考えていく必要があります。


2.利便性

利便性のある病院とはつまり、どのような病院でしょうか。外来通院をしている患者さんであれば、片道30分以内で通える病院や、通勤途中にある病院など、通うのに便利な病院などがあげられるでしょう。また、家族が入院してもいつでも付き添えるように24時間面会が可能な病院、建て直したばかりの綺麗な病院、売店やその他サービスが充実していて入院していても自由に買い物が出来る病院、付き添いがいなくても必要な物は頼めば配達してくれる病院など、病院サービスがいき届いている病院、などが考えられます。

しかし、現実的には全国どこにいても自分が受けたい治療、入院したい設備が整っている病院があるとは限りません。例えば白血病となり骨髄移植が必要となった時に、移植の経験が豊富な医師が大勢おり、クリーンルームなど移植に必要な施設が完備していて、個室には長期入院をしていても外界との連絡がとれるようにインターネットなどの設備が完備している、という病院は探せば日本のどこかにはあるかもしれませんが、自宅の近くにはない可能性があります。こういった場合に、あなたはどこまで利便性を追及するでしょうか。自宅から遠く、家族が付き添うために自宅との往復に片道2時間以上かかる専門病院でしょうか?それとも、ある程度の施設は整っており、治療成績も中ぐらいだけれど、隣町にある古い病院でしょうか。あなたの立場によっても選択は変わってくるでしょう。御見舞いに来るのが老齢の両親なのか?小さな子どもを連れて週末だけ会いに来る若い夫なのかによっても変わるでしょう。また、非常に治療が難しい状況での移植治療なのか、それとも状態が安定している状態での移植なのか、など病状によっても答えは変わってくるのではないでしょうか。

こうして自身の状況を把握した上で初めて、条件にあった病院探しが始まります。このように利便性一つとっても、様々な個人的な状況を吟味した上でなければ『私にとっての良い病院』は見えてこないのです。


3.相性

『医師選びはお見合いだ』とか、『どんな人にも合う医師はいない』『医師も人だから患者さんとの相性がある』と世間でよく言われています。でも、この言葉を患者さんは素直に受け取ることが出来るでしょうか?優しい医師、話を聞いてくれる医師であれば、万人に良い医師と言えるのではないのか?医療者が医師を紹介する際に必ず『相性があるから、、、』というのは、トラブルを避けたい体の良い飾り文句なのではないのか?そう思っている人も多いのではないでしょうか。確かに人を紹介することによるリスクを避けたいという気持ちが医療者側にないと言えば、それは嘘になると思います。しかし、その言葉の意味はそれだけではありません。この『相性』という項目は侮れません。これは、私が医療コーディネーターという活動を通して、患者さん一人一人が同じ現象を体験しても違う感想をもち、医療に対する知識や物事の捉え方が大きく違うことを体感して実感したことでもあります。

患者と医師にも相性がある、という説明をする際によくお話する事例があります。それは医師の解熱剤の使い方です。解熱剤とは熱を下げるための薬ですが、この薬を使う熱の目安は一般的に38.5度以上です。では、実際にあなたの熱が38.5度になったとします。あなたは解熱剤を使いたいですか?それとも、体が辛ければ38.0度であっても使いたいでしょうか?もしくは39度であっても使いたくないでしょうか?それとも、『そんなことは医者が考えることだ!そんなこと患者に聞くもんじゃない!』と思うでしょうか。例えば、医師が決めるもんだ!と思っている患者さんが39度の熱を出した時、医師が懇切丁寧に解熱剤の身体への影響を説明し、私はこのような理由から解熱剤は使わない方が良いと思いますが、あなたが決めて下さい、といったらどう思いますか?『その医師はとんでもないやつだ!』と感じるかもしれません。ただ黙って辛い症状を取るのが医師の責務だ、患者である自分に決めさせるなんて責任逃れをしていると感じるかもしれません。

しかし、普段から我慢強く、出来るだけ薬は使いたくない、薬である以上副作用や後遺症が発生する確率はあるのでそのような犠牲にはなりたくない、と思っている患者さんに対して医師が、『辛ければ38.5度以下でも使って良いですよ。』と言えば、この医師は薬を甘くみている、リスク管理の出来ていない医師だと感じるでしょう。

また、別の例を挙げます。女性特有の病気で入院している患者さんが、男性看護師の存在をどうしても許せない、自分の看護は絶対にして欲しくない、男性看護師を雇っていて、女性に交代してくれと言っても変わってくれない病院の制度はどうしても許せないという人もいれば、技術が信頼出来るのであれば男性であっても女性であっても構わない、一々女性看護師がいいか男性看護師が良いかと聞かれるのは、逆に患者に性を意識させる行為であっておかしいと感じる、と考える人もいます。自分が今、どのような病気であり、どのような精神状況にあるから何を医療現場に求めているのか、ということが見えてこない状態では、どのような医療者が相性の良い医療者なのかは見えにくいものなのかもしれません。


上述した3つを全て満たす病院が良いのは言うまでもありませんが、現実的には3つのうちいずれかで妥協点を探すことがほとんどです。本人や家族の思い、価値観に照らして探っていくことになります。医療という専門的な分野、そして自分と家族のその後の人生に大きく影響を及ぼす決断ですから、この作業は困難を極めます。

専門性や利便性を考えた場合、どこに自分の必要としている病院があるのかを知るには情報が必要です。最近はインターネットや書籍でかなりの量の医療情報を入手できるようになりました。しかし、最新の信頼に値する情報、自分にとって必要な情報の見極めを医療者ではない人々が短時間で行うのは難しいのが現状です。

また、相性を考えた場合には、自身が医療に何を求めているのかを知る必要があります。これは、探して見つかるものではなく、自身の気持ちを整理して、病と生きていく自分や家族を想像し、築いていくとことが必要になります。この作業を、突然の病でいつもの精神状態でない自身やその家族だけで行っていくことは容易ではありません。

では、納得のいく病院選びをするにはどうしたら良いのでしょうか。それには、冷静である当事者以外の立場の人間、そして医療に明るい人間にサポートしてもらうことです。身近にいない、そんな時は医療コーディネーターをご活用下さい。


以上簡単ではありますが、病院選びのエッセンスをお伝えしました。

みなさまの病院選びの一助となることを願っています。


posted by 楽患ナース株式会社

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