医療コーディネーターとして心掛けていること #1 岩本ゆりさん
岩本ゆり
看護師、助産師、医療コーディネーター
”私が医療コーディネーターとして心掛けていること”をお伝えします。患者の表面上の訴えだけでなく、その不安や悩みの本質に迫ることが大切だと考えています。
posted by 楽患ナース株式会社
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岩本ゆり
看護師、助産師、医療コーディネーター
”私が医療コーディネーターとして心掛けていること”をお伝えします。患者の表面上の訴えだけでなく、その不安や悩みの本質に迫ることが大切だと考えています。
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第2回 医療コーディネーターの相談室
岩本ゆり 医療コーディネーター・看護師・助産師
前回は、患者と医療者とは医療に求めていることが違うことから、両者の間に溝が出来ること、その溝を埋めるために医療コーディネーター(以下MC)は中立な立場でいること、そして患者が自分らしく納得のいく医療を受けるための支援を行っていることについてご紹介した。
今回は、MCが実際に支援を行う際に標準にしている手順をご紹介する。下記の図は、「納得のいく治療や療養方針を決めるために推奨される手順」である。
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図1 患者が納得のいく治療や療養方針を決めるための推奨手順(作成:NPO法人楽患ねっと)
※画像をクリックすると詳細拡大します
この手順はあくまでも理想的な流れであり、人それぞれおかれた状況などにより異なる手順を踏んでいく。例えば、病気の理解はしっかりしているが治療の選択は迷われている方、病気の告知直後で気が動転し病気の理解すらできていない方、など実際はこの手順の段階の途中でつまずいたり、行きつ戻りつしたりする。
本連載では、図1の手順それぞれにおいて事例を挙げて説明していくことで、患者自身が今どの位置にいるのかを知り、さらに何を考える必要があるのか、といった今後の道しるべとして役立つことを期待している。
今回は一つ目の段階である「病気を知る:自分自身のおかれている医学的状況(病気や病期など)を理解すること」について事例を挙げて説明する。
冬のある日、MCは50代の男性Mさんと喫茶店でお会いした。傍には友人が同席。Mさんは早口に自分の病気について語り始めた。
Mさんの今の一番の懸念は胃が重いという不快感。一週間前に自覚症状があることで不安になったMさんは近くの病院で内視鏡検査を受けた。検査をした医師は暗い表情でカメラを覗き込みながら、腫瘍があること、2か所怪しい個所があること、細胞を切り取ったので、これから検査に回すことをMさんに説明した。検査結果は2週間後に外来で伝える、ということで、家族を同伴して来院するように言われたとのことだった。Mさんは、自分は絶対に胃がんであるという確信を抱いていた。そして既に自覚症状があることから、かなり進んでいるのではないか、既に転移をしているか、末期なのではないかと疑いをもっていた。次回受診時に家族と来るように言われたこともその不安を追いたてた。自分はまだまだ若い、死にたくない。今の病院は自分の状態がこんなにも悪いに関わらず2週間も結果を待てと平気な顔で言う。2週間も治療もせずに放っておいたら自分は手遅れになるのではないか。こんな病院にはかかっていられない。良い病院、良い治療法を知りたい、これからどうしたら良いのか相談に乗って欲しい、という依頼であった。
MさんがMCに相談しなければならないほど不安へと駆り立てている原因は何であろうか。自分が「がん」かもしれないことからくる漠然とした不安?「がん」であった場合、仕事に支障がでるなどの具体的な心配事?どこの病院・どんな治療法が良いのか分からないといった信頼関係に関わること?
話を聞いてみると、Mさんの心配の最たるものは、検査の結果が説明されるまでに2週間かかるということに対する不安であった。今のこの時間をどう過ごして良いか分からない、取り返しのつかないことになるのではないかという不安、その不安を生み出した医療機関や医師への不満が渦巻いていた。
こうした場合に病院スタッフへ相談したとしよう。すると「2週間待つことは仕方がないこと」を説明され、次回の受診を待つことを促されるだろう。この返答に患者は職員同士がかばい合っていると感じ、益々病院への不信感を募らせていくだろう。
しかし、同じ質問をMCへ聞いてみるとどうだろうか?MCは、Mさんの質問にこう答えた。
①2週間待つ理由は病院の都合。確実に検査結果が出てから受診してもらおうとするとこの程度の間をあけることはどこの病院でもやっている。しかし中には2週間後に外来で、と言われたにも関わらず病院から自宅へ電話がかかってきて早めの受診を促されることがある。結果が出たのですぐにでも受診して欲しい、という電話だ。こうした場合は結果が悪いことが多い。ひどく進行しているために治療を早く始めるようと医師から勧められるのだ。2週間後まで連絡がこないということは、それだけ進んでいないということも言える。Mさんが思っているより病状は進んでいないのでは?
②外来へ一人で来ないように、ということを言う医師は患者への配慮が出来ている医師。一人で病院へ言っていきなり病名を告知され、何のフォローもなかった、という話はざらにある。何となくがんであることを匂わせ、次回への気持ちの準備をさせようとしている辺り、患者のことを考えている行動であると評価できる。今不安はあるが、それは心の準備期間として必要な過程である。
③まずは焦らないことが大切。がんというと進行が早くて一日でも遅れれば手遅れになるというイメージがあるがそうではない。焦って意に沿わない治療をすることは後悔につながる。今のこの時間に出来ることは焦ることよりも、自分にとっての健康の意味、病気の意味、これからの人生設計についてじっくり考えること。それがこれから後悔しない治療を決めていく上でとても重要になってくる。また同時に病気について情報収集して知識を得ることも大切。次回の受診時に医師からの説明を聞いて理解できるように、出来る範囲で病気について学んでおくことを勧めた。
一週間後、患者より電話があり、初期の胃がんであったこと、病気についていろいろ調べることができたこと、医師からの病状説明は誠意が感じられ、治療法についても希望していたものが受けられることから、今の病院に続けてお世話になろうと思っている、と連絡があった。
MCに相談したことで今の自分の状況を冷静に振り返ることができ、自分なりに安心して治療に取り組めそうだとの弾んだ声であった。がんと告げられた診察だったにも関わらず、Mさんの場合は前向きに医師との関係を持つことができた。こうしたことの繰り返しが、後悔の少ない医療を生み出していく一歩となると考えている。
次回は、「生活の変化を知る:おこりうる生活の変化を推測して受け止めること」とはどういうことかを事例をもってご紹介する。
※当記事はがん情報ネットワークに連載しているものです。
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www.katarina.jp
看護師の語りを医療に生かす 動画メッセージ集
" かたりな " とは、看護師が語る会です。
ナースがカタリスト(※)として思いを語る、という考えで " かたりな " と名付けました。
私たちは、看護師に『語りな』と呼びかけます。
それは、看護師の語りは医療を患者中心のものに導くからです。
『医療において看護師とはどのような存在なのか』。それを語るためには、看護師が自らの経験と価値観に基づいて、自らの権限で発言しなければなりません。
その語りは、看護師の共感を呼び、励みになり、時に学びになることでしょう。
看護師は、ベッドサイドで患者の思いに耳を傾け、待合室で家族の相談にのり、治療で患者の体に触れ、ときに患者の代弁者として、医師、薬剤師、リハビリスタッフ、介護に関わる方々とコミュニケーションします。
こうした人々との本音の関わりから生まれた語りは、医療の本質や問題点を浮き彫りにすることでしょう。それは医療に関わる大勢の方々の思い、考えに何らかの気づきを生むことでしょう。
この会が、看護師ひとりひとりのカタリストとなること、また、医療におけるカタリストととなる看護師の集まりとなることを期待しています。
※カタリストは触媒という意味です。自発的に起こり得る反応の反応速度を増加させます。
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